営業として成果を出し、顧客からも社内からも頼られる存在になりたい。
そう考える人は多いでしょう。
しかし、「売れる営業マン」とそうでない営業マンの間には、一体どんな違いがあるのでしょうか?
特別な才能やセンスが必要だと思われがちですが、実はトップセールスと呼ばれる人たちの多くは、基本となる「心得」を深く理解し、愚直に実践しています。
この記事では、単なる精神論ではなく、明日からの行動を変える具体的なヒントとして、「売れる営業マンになるための5つの心得」を深掘りして解説します。
ボリュームはありますが、読み終える頃には、あなたが目指すべき姿がより明確になっているはずです。
心得1:単なる『モノ売り』ではなく、『課題解決のプロ』を目指す
売れない営業マンは自社の商品やサービスを説明することに終始しがちです。
一方、売れる営業マンは、まず顧客が抱える課題やニーズを徹底的に理解することから始めます。
商品は、あくまでその課題を解決するための「手段」にすぎません。
なぜ「課題解決」が最重要なのか?
- 顧客は商品そのものではなく、商品によって得られる「価値(課題解決、目標達成)」にお金を払います。
- 課題解決のパートナーとして認識されれば、価格競争に巻き込まれにくくなり、長期的な信頼関係を築けます。
「課題解決のプロ」になるための具体的アクション
徹底的なヒアリング: 顧客の話を「聞く」のではなく「聴く」。
表面的な言葉だけでなく、その裏にある背景、感情、真のニーズを引き出す質問を心がけましょう。
やりがちな質問(Product Focus)
「この新機能、すごくないですか?」
「〇〇(商品名)にご興味はありますか?」
「競合のA社より、うちの方が安いです!」
「導入事例はこちらです(一方的に提示)」
心がけるべき質問(Solution Focus)
「現在、〇〇の業務で特に時間がかかっている点はどこですか?
「〇〇(目標)を達成する上で、今一番のボトルネックは何でしょう?」
「〇〇の課題が解決されることで、御社にはどのようなメリットがありますか?」 |
「同様の課題を抱えていた〇〇社様では、このように解決されましたが、御社の場合はどう応用できそうでしょう?」 |
事前準備の徹底: 訪問前に、顧客の業界動向、事業内容、最近のニュースなどを調べ、仮説を持って臨みましょう。
「おそらくこんな課題があるのではないか?」と考えることで、ヒアリングの質が格段に向上します。
顧客視点での価値提案: 機能の羅列ではなく、「この機能によって、あなたの〇〇という課題がこのように解決され、△△というメリットが生まれます」というストーリーで語りましょう。
心得2:揺るぎない『信頼』を築き上げる
「この人から買いたい」と思ってもらうこと。これこそが営業の核心であり、その土台となるのが顧客との信頼関係です。
売れる営業マンは、小手先のテクニックよりも、地道な信頼の積み重ねを何よりも大切にします。
なぜ「信頼」が不可欠なのか?
- 信頼がない相手に、大切な予算や会社の未来に関わる判断を任せることはありません。
- 信頼は、リピート購入や紹介、さらには多少の失敗を許容してくれる関係性につながります。
信頼を築くための具体的アクション
- 約束は必ず守る:納期、訪問時間、提出物の期限など、どんな小さな約束でも守る。
もし守れそうにない場合は、分かった時点ですぐに、正直に連絡し、代替案を示す。 - 誠実・正直であること: 自社にとって都合の悪い情報でも、顧客にとって重要であれば正直に伝える。
分からないことは曖昧にせず、「確認してご連絡します」と持ち帰る。 - 迅速かつ丁寧な対応: 問い合わせや依頼には、可能な限り早く、丁寧に対応する。
進捗状況をこまめに報告するだけでも、安心感を与えられます。 - 一貫性のある言動: 言うこととやることが一致している。
その場しのぎの発言は、いずれ信頼を失います。 - 相手への関心を示す: 商品の話だけでなく、顧客のビジネスや業界、時には個人的な関心事(もちろん、踏み込みすぎない範囲で)にも関心を持ち、会話の中で触れる。
- ギブの精神: すぐに見返りを求めず、まずは顧客にとって役立つ情報提供(業界ニュース、関連するセミナー情報など)を積極的に行う。
これらの行動は、一見地味ですが、継続することで「この人は信頼できる」という評価につながっていきます。
心得3:壁を乗り越える『スマートな粘り強さ』を持つ
営業活動に「断り」や「失敗」はつきものです。心が折れそうになる場面も少なくないでしょう。しかし、売れる営業マンは、そこで簡単に諦めません。ただし、それは単なるしつこさとは異なります。
なぜ「スマートな粘り強さ」が必要なのか?
- 一度断られただけで諦めていては、成約のチャンスを逃してしまいます。
- しかし、状況を顧みないしつこいアプローチは、逆効果となり、信頼を失う原因にもなります。
「スマートな粘り強さ」を発揮するための考え方
- 「断り=情報」と捉える: 拒絶された事実だけを見て落ち込むのではなく、「なぜ断られたのか?」「何が足りなかったのか?」という貴重な情報を得られたと考えます。
- 原因分析と仮説検証: 断られた理由を冷静に分析し、「タイミングの問題か?」「提案内容がニーズとずれていたか?」「キーパーソンにアプローチできていなかったか?」など、原因の仮説を立てます。
そして、その仮説に基づいてアプローチ方法や提案内容を修正し、再度挑戦します。 - タイミングを見極める: 顧客の状況や反応を見ながら、押すべき時と引くべき時を見極めます。
今は時期尚早と判断すれば、無理押しせず、関係性を維持しながら適切なタイミングを待ちます。 - セルフマネジメント: 失敗しても過度に自分を責めず、「次があるさ」「ここから学ぼう」と気持ちを切り替えるメンタルの強さも重要です。
小さな成功体験を積み重ね、自信を維持することも大切です。
スマートな粘り強さ (Good Persistence) | 意味のないしつこさ (Bad Persistence) |
---|---|
断られた理由を分析し、改善策を考えて再アプローチする | 同じ内容、同じ方法で何度もアプローチする |
顧客の状況やタイミングを考慮する | 相手の都合を考えず、一方的に連絡を取り続ける |
別の角度からの情報提供や関係構築を続ける | 「買ってくれ」という要求ばかり繰り返す |
見込みが薄いと判断したら、潔く引くこともできる | 明らかに脈がないのに、いつまでも追いかけ続ける |
心得4:常に自分をアップデートし続ける『学習意欲』
「もう十分知っている」と思った瞬間から、成長は止まります。市場、顧客、技術、競合は常に変化しており、売れる営業マンは、この変化に対応するために学び続けることを怠りません。
なぜ「学習意欲」が差を生むのか?
- 知識やスキルが陳腐化すれば、顧客に最適な提案ができなくなり、信頼を失います。
- 常に新しい情報をインプットし続けることで、引き出しが増え、提案の幅と深みが格段に向上します。
- 学ぶ姿勢は、顧客に「この人はプロフェッショナルだ」という印象を与えます。
学び続けるための具体的な方法
- 商品・サービス知識の深化: 自社の商品・サービスについて、誰よりも詳しくなる。開発背景や技術的な側面まで理解を深める。
- 業界・市場動向の把握: 担当する業界の最新ニュース、トレンド、法規制の変更などを常にチェックする。(例: 業界専門誌、ニュースサイト、調査レポート)
- 顧客理解の深化: 顧客のビジネスモデル、業界内でのポジション、経営課題などを継続的に学習する。
- 競合分析: 競合他社の製品、価格、戦略、強み・弱みを把握する。
- 営業スキル・知識の向上: 書籍、セミナー、研修、オンライン学習プラットフォームなどを活用し、セールストーク、交渉術、プレゼンテーションスキルなどを磨く。
- 情報交換: 社内外のデキる営業マンや、異業種の人と積極的に交流し、情報やノウハウを交換する。
- 振り返り: 成功事例だけでなく、失注事例からも「なぜそうなったのか」を学び、次に活かす。
学習リソース例(一例)
- 書籍(営業、マーケティング、心理学、業界専門書など)
- 業界専門メディア、ニュースサイト(日経新聞、業界紙、Webメディアなど)
- セミナー、ウェビナー(自社開催、外部団体開催)
- オンライン学習プラットフォーム(Udemy, Coursera, Skillshareなど)
- ポッドキャスト(営業関連、ビジネスニュースなど)
- 社内ナレッジ、トップセールスの同行・OJT
- 顧客からの直接のフィードバック
重要なのは、インプットした知識を実際の営業活動でアウトプットし、試してみることです。
心得5:目標達成への『執着心』と逆算思考の『行動力』
売れる営業マンは、単に「頑張ります」と言うだけでなく、達成すべき目標を明確に設定し、そこから逆算して今やるべきことを具体的に計画し、実行します。
目標達成への強い意志、いわば「執着心」が行動の源泉となります。
なぜ「目標設定」と「行動力」が成果に繋がるのか?
- 明確な目標は、日々の活動の「羅針盤」となり、迷いをなくし、モチベーションを高めます。
- 目標から逆算して計画を立てることで、やるべきことが明確になり、効率的な活動が可能になります。
- 「待ち」の姿勢ではなく、自ら主体的に行動することで、チャンスを引き寄せることができます。
目標達成に向けた具体的なステップ
明確な目標設定 (SMART): 目標は、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性がある(Relevant)、期限がある(Time-bound)のSMART原則に沿って設定します。
- 悪い例:「売上を頑張って上げる」
- 良い例:「〇〇(商品)の売上を、△月末までに、前期比120%の□□□万円達成する」
目標のブレイクダウン: 年間の目標を達成するために、半期、四半期、月、週、日単位で何をすべきかに落とし込みます。
- 例:月10件の成約目標 → 週2-3件の成約が必要 → そのためには週20件の有効商談が必要 → そのためには週50件の新規アポイントが必要…
行動計画の策定: 日々の活動レベルで、「いつまでに」「誰に」「何を」「どのように」行うかを具体的に計画します。
実行と進捗管理 (PDCA): 計画(Plan)に基づいて行動(Do)し、定期的に結果を測定・評価(Check)し、計画や行動を改善(Action)します。このサイクルを回し続けることが重要です。
PDCAサイクル | 具体的な行動例(営業) |
---|---|
Plan (計画) | 月末目標達成のため、今週は新規アポ10件、既存フォロー5件 |
Do (実行) | 計画に基づきテレアポ、メール送信、訪問活動を行う |
Check (評価) | 週末に結果を確認。アポ獲得率、商談化率、受注確度は? |
Action (改善) | アポ獲得率が低い→トークスクリプトを見直す/リストを変更する |
主体的な行動: 指示待ちではなく、自ら課題を見つけ、改善策を考え、積極的に行動を起こします。
まとめ
「売れる営業マン」になるための5つの心得、いかがでしたでしょうか?
- 課題解決のプロを目指す
- 揺るぎない信頼を築き上げる
- スマートな粘り強さを持つ
- 常に学び続ける
- 目標達成への執着心と行動力を持つ
これらは、特別な才能ではなく、意識と行動次第で誰でも身につけることができるものです。
もちろん、すぐに全てを完璧にこなすのは難しいかもしれません。
しかし、一つ一つの心得を深く理解し、日々の活動の中で「今はどの心得を意識すべきか?」と考えながら実践していくことが、成長への確かな一歩となります。
ぜひ、明日からの営業活動にこれらの心得を取り入れてみてください。
あなたの努力が実を結び、顧客からも社内からも「頼られる営業マン」となることを応援しています。